アーツアンドクラフツ運動〜デザインの歴史から学ぶ〜
デザインの転換期についてお話しようと思います。
デザインの大きな変化というとすこし大袈裟ですが、芸術に関する人々の考え方や文化、そして芸術家、技術者たちの本来のプライドを取り戻せた出来事だったのではないでしょうか?
アーツアンドクラフツ運動
この運動について説明をする前に「ウィリアム・モリス」という人物について知っておく必要があります。「ウィリアム・モリス」は、イギリスの詩人、小説家、社会主義活動家、デザイナーでした。裕福な家庭で育った後に大学卒業後、建築を学びその後は他の三人と装飾芸術会社を設立しました。その中で彼は、壁紙・織物・家具・窓などをデザインしていました。のちに自身の会社も持ちます。またデザイナーとしての活動と詩人としての活動は競り合うほどで、詩人としての活動も政治・社会的に多くの足跡を残していました。
アーツアンドクラフツ運動を簡潔に述べると、19世紀半ばにイギリスのデザインと装飾を革命するために行われた運動で、イギリスだけにとどまらずヨーロッパや北アメリカにまで広がりました。最も影響を与えたのは、建築家のAugustus Puginと作家のJohn Ruskinとウィリアム・モリスです。
現在アーツアンドクラフツ運動は産業批判が主として語られています。わかりやすくいうと、芸術は芸術家による手作業とデザインであるべきで、近代的な工場や機械の使用、労働分業などを批判する運動です。工芸品は機械によって工場で見知らぬ労働者が作るのではなく、設計した者が(芸術家が)作るべきではないだろうかという提唱です。
アーツアンドクラフツの提唱と現代
当時の社会背景に影響しこのような運動が広まりましたが、現代をみるとそのような大量生産型の安価なプロダクトは身の回りにあふれています。今では当たり前になっていますが100円ショップのプロダクトを例にとると、消費者が購入しやすい安価な商品を安価な労働費で賄うために海外に工場があることがほとんどです。このこと自体がいけないのではなく、プロダクトは単に日常製品で消耗品に過ぎない、としか考えない人々が多くなり、製品/工芸品/芸術品そのものに興味すらないという人々が多くなっていることが問題であると思います。
国内外問わず、成功者と呼ばれる人々は芸術に関して多くの知識や自分なりの考えを持っている人も多いです。それはお金を持ったからではなく、芸術にもともと関心があったからです。自身の感覚に素直に従い、興味を持ったことを調べる癖がついているからだと思います。彼らは生きている中でジャンルにとらわれず興味関心を持つから成功したのではないでしょうか?
デザイナーであっても、デザインだけではなく身の回りの興味関心はなおざりにしたくないですね。